武装神姫 ブレードマスター  廃墟と化した市街地の一角に、戦乙女型アルトレーネタイプの神姫が立って いた。  彼女は、右手にアルトレーネタイプの標準装備の1つであるブラオシュテル ンという剣を、左手に短剣を持っていた。  特に身構えるでもなく、自然体で立つ彼女の左側に位置する建物の影から、 忍者型フブキタイプの神姫が飛び出した。そして、アルトレーネタイプを確認 するなり、光学式の−9マシンガンを発砲した。  発砲音と共に発生する振動(火薬式のような反動ではない)がライドしている マスター共々、フブキタイプの腕に負荷をかける。それを代償に放たれた光弾 がアルトレーネタイプ目がけて飛んでいく。  この光弾に対し、アルトレーネタイプは行動を起こした。ただし、単に回避 行動を取ったのではない。むしろ逆に一歩踏み込み、両手に持つそれぞれの武 器を縦横に振るって光弾を全て弾き飛ばしてのけたのだ。  だが、その背後に高機動トライク型イーダタイプの神姫が急速に迫り、アル トレーネタイプの頭上から研爪の鋭い爪を振り下ろした。 「もらいましたわ!」  攻撃の成功を確信して、イーダタイプの口から叫びが漏れる。  だが、その確信は直後に破られた。研爪の爪は、いつの間にかかざされた大 剣ジークリンテの刀身に防がれてしまったのだ。ジークリンテの柄には当然そ れを握る手がある。その手の正体は、アルトレーネタイプが装備していたリア パーツ、ニーベリングの腕のものであった。 「そんな!?」 「さすがマスターです。予想通りでしたね」  驚くイーダタイプをよそに、アルトレーネタイプはライド中のマスターに対 して感嘆の言葉を上げた。そんな彼女の横に小さい画面が表れる。そして、画 面内にライド中のマスターの顔が表示され、応じた。 『悪くない連携攻撃だがな』  すると、フブキタイプの方にも同じように画面が表れ、同じようにフブキタ イプにライド中のマスターが映し出された。 『完璧に防いでおいて、そう言われても説得力がありません!』 『いや、まだ防ぎきっていないからな』  フブキタイプのマスター、左藤楓の叫びに彼は軽い調子で返す。同時にジー クリンデを一振りして、押し止めていたイーダタイプを勢い良く放り投げた。 「きゃあっ!」 「うわっ!?」  投げられた先にいた高速トライク型アークタイプが、激突を避けるために偃 月刀による突撃を中断し、慌ててジャンプした。  これは、アルトレーネタイプにとって攻撃の好機と言えたが、それは出来な かった。と言うのも、ブリューナクという槍による突撃を仕掛けててきたフブ キタイプに対応せねばならなかったからだ。  彼女は素早く身を開き、同時にブラオシュテルンを立ててブリューナクによ る突き込みを受け流す。続けて、左手に持つ短剣を、がら空きになったフブキ タイプの背中目掛けて振り下ろした。  これを察知した楓は、自分の神姫に指示を出す 『メープル、緊急回避!』 「はい!」  応じる声と共に、フブキタイプ、メープルの姿が突然消え、短剣は空に突き 立つだけに終わった。  消えた理由は、回避用に組んだ特殊機動であるレールアクションを発動させ、 急加速を行ったからだ。その加速で得た速度を利用して、そのままイーダタイ プ、降りてきたアークタイプと合流した。 『2人とも大丈夫?』 『うん、何とか・・・マグノリア、行ける?』 「大丈夫です。先方が手加減して下さっていますから、まだ戦えます」 『こっちも大丈夫。アナベル、そっちは?』 「大丈夫、攻撃を邪魔されただけだからね」  イーダタイプ、マグノリアのマスター大山蓮華とアークタイプ、アナベルの マスター紫陽花がそれぞれ自分の神姫と共に、まだ戦える事を伝える。  そんな3人に、アルトレーネタイプがゆっくりと近づいた。 『3人とも、腕を上げたなぁ』 『いやいやいや、さっきの連携を完全に破った黒川さんに言われても、いまひ とつ説得力がないんですけど。レーネちゃんからも何か言って』  アルトレーネタイプ、レーネのマスター黒川大悟の感心した風の発言に、陽 花が思わず突っ込む。だけでなく、彼の神姫であるレーネにも反応を促す。だ が、どこかズレたところがあるアルトレーネタイプのレーネは、陽花の期待に 反して自分のマスターに同意した。 「マスターの言う通りなのです。特に、最後のカウンター攻撃はかなり本気で したのに避けられたのです。だから、強くなったと自信を持っていいのです」 『えーっとぉ・・・』 あくまでも真面目に返され、反応に困る陽花。そんな微妙な空気を、救うよう に鋭いアラーム音が断ち切った。 『さて、おしゃべりはこれで終わりだ。残り1分。ここから先は、宣言通り加 減なしで行く。耐え切れるかどこか、見せてもらう』 「行くのです!」  黒川大悟の宣言と共にレーネが地面を蹴り、今までとは比べものにならない スピードで襲いかかった。  1分後・・・ 「に、逃げきれた・・・」 「あと10秒あったら、危なかったよね〜」  ブースから出てきた陽花は半ば呆然と呟いた。その隣では、さすがに肩で息 をしながら、それでものんびりとした口調の蓮華が同意する。  そこへ、息1つ乱れていない黒川大悟がしっかりとした足どりで近づいた。 「全員、生き残ったか。1人くらいは倒せると思ったんだか・・・やっぱり、 強くなったな、3人共」 「あ・・・ははは・・・」  3人を1人で相手どったにも関わらず、呼吸1つ乱れていないばかりか、そ の3人を一方的に攻撃してのけた人にそんな事を言われては、もはや笑うしか ない。  一歩、いや半歩間違えれば嫌味にしかならない発言だが、F1チャンピョン の座を竹姫葉月と競い合うほどの実力者にして、神姫バトルの師にあたる人物 から出るとなると、弟子としてはそうするしかないのだ。  そんな関係を示すように、2人よりはしっかりした足どりの楓が、彼の前に 来ると一礼した。 「ご指導いただき、ありがとうございました」 『ありがとうございました』 彼女に続いて陽花と蓮華も一礼する。 「どういたしまして。俺でよければ、いつでもどうぞ」 「はい、その時はお願いします」  同じように彼が軽く一礼すると、楓は頷いた。その様子を見ていたアナベル がポツリと呟いた。 「なんだかさ。メープルのマスター、ずい分とうれしそうじゃない?」 「あ、わたしもそう思いました。なんだか、うきうきしていると言うか・・・」 「ええ、そうね。楓は、この場所で黒川さんと2人っきりで会える時、すごく 嬉しそうだし」  マグノリアが受けると、メープルも大いに同意した。そこへ陽花が口を挟ん だ。 「ああ、そういや、最初はここに来ているの、内緒にしていたっけ。いいなぁ、 こんな有名で強い人と1対1でバトルしていたんだ」 「どちらかというと〜、このお店で手取り足取り腰取りコーチしてもらったっ て感じじゃないかな〜」  蓮華のとんでも発言に、楓は顔を真っ赤にして叫んだ。 「ち、ちょ、みんなしてそんなこと言わないの!黒川さんも困っているじゃな い!それに、黒川さんが来るって分かるまで、結構怖い感じだったんだから、 このクラブ・ヴァルハラは!」  クラブ・ヴァルハラ。  かつて、レギュレーション無視、賭博ありの裏バトルの舞台であったばかり か、不正アプリを使用した神姫爆弾というテロ用兵器の開発にすら関わってい た店である。  そんな裏社会に属する店は、警察と神姫の社会的評価を心配した神姫マスター 達の協力により摘発され、廃業となった。  にもかかわらず、クラブ・ヴァルハラは復活した。  摘発に協力した神姫マスターらが、一種の「隠れ家」としての活用を希望し たこと。そして、警察もこの店を「不審者の釣り出し場」としての活用を考え たこと。そんな2つの思惑が、一度は廃業となった店の復活を促したのだ。  もっとも、当時と違い、今では店員などもMMS管理機構が認めた人間が主 体になり、安全度は格段に跳ね上がっている。  しかし、店の雰囲気それ自体は大きく変わってはいない。  薄暗い照明も、入口に陣取るバットを持った用心棒も、そして、入店時に支 払う神姫ポイントも、摘発前から変わっていない。  何故か?  隠れ家らしく、誰彼構わず入って来ないように、「敷居を高く」するためで ある。  誰だって、合法なくせに強力な攻撃力を持つ道具を手にした厳つい大男の目 の前を通ったり、陰気なほどに薄暗く静かな店でくつろぎたいとは思わないだ ろう。  クラブ・ヴァルハラの正体を知らずにやって来る酔っ払いや、「隠れ家」と いう言葉の意味を深く理解しない素人程度なら、まず用心棒に怯えて逃げ出す。  用心棒さえ押し切って店内に押し入るような蛮勇の持ち主(泥酔者を含む) であっても、店内のあまりに静か過ぎる空気に、場違いを悟って逃げる。  こうやって、店で過ごせる人間をしっかりふるいにかけることで、隠れ家と しての機能を維持しているのだ。  無論、摘発以前からの「不審者」に異変を察知させないようにするために、 という目的もある。  そんな事情までは知らない楓が、自分の体験を大声で叫んだ。 「負けると神姫が暴れたりしたし、負けた神姫を壊したりする人もいたし、私 が負けたらいやらしい事しろなんて言う人までいたんだから!」  が、同僚2人と神姫3体による追求は止まらない。そして・・・ 「レーネ、逃げるぞ」 「はいなのです」  風向きが怪しさを感じ取った彼は、自らの神姫と共にカウンター席へ逃げ出 したのだった。  逃げ出した先には、天使型アーンヴァルタイプを伴ったセミロングの髪を持 つ女性がいた。 「おや、いいんですか?彼女達を放っておいて」  シニカルな笑みを浮かべながらそう問いかけてくる彼女に、大悟は肩をすく めて見せた。 「いや、さすがに雲行きが怪しくなってきたからな。それに、連戦はきつい」 「なんですか、それくらいで情けない。それでも前F1チャンプですか?」 「そう思うなら、お前も相手をやってくれ、現F1チャンプ、竹姫葉月殿」  刺々しくはないが、ライバル心むき出しとしか思えない会話に、カウンター に座り込んでいた戦乙女型アルトアイネスタイプの神姫が呆れたように話しか けた。 「ウチのマスターも大概だとは思うけど、そっちのマスターも相当なものだよ ねぇ・・・いつもの事だけど」 「すみません、偉そうで。この態度は完全に地なので、こういうものだと思っ て諦めてください」  女性、先に彼からF1チャンピオンの座を奪回した竹姫葉月の神姫、アーン ヴァルタイプのアルテミスは謝罪しているようで全く謝罪していない謝罪と共 に頭を下げる。そこへ、彼の肩から飛び降りたレーネが、アルトアイネスタイ プに向かってたしなめた。 「アイネス、いくら本当の事でも、その発言は失礼なのです」 「あのね、姉さん。その発言も大概失礼だよ」  「姉」とでも言うべき姉妹機種にして、黒川大悟の先輩神姫でもあるレーネ に、アイネスは思わすそんなツッコミを入れてしまう。  そんなかけ合い漫才に、マスターである彼は「やれやれ」とだけ呟くと、葉 月の隣の席に陣取った。  同時に、クラブ・ヴァルハラのマスターが彼の前にグラスを置いた。 「注文した覚えはないが・・・」 「安心してくれ。お前さんに会いたいという客からのおごりだ。ああ、これも 渡してくれと頼まれてもいたな」  そう応じながら、マスターは名刺を2枚取り出し、彼の前に置いた。 「アームズ・イン・ポケットのタケルさんとディオーネコーポレーションのミ コトさん?」  名刺に記された名前を読み上げる大悟に、レーネとアイネスが反応した。 「それって、ボク達を創ったところじゃない?」 「そうなのです。アームズ・イン・ポケット社は私達の武装を、ディオーネコー ポレーションは私達の身体を創ったところなのです」 「そんな会社の人間が、何で俺のところに?」  神姫達の問いに、大悟はもっともな疑問を呈する。が、それに答えられる人 間は1人もいなかった。名刺を差し出したマスターにいたっては、あっさりと 肩をすくめて見せた。 「さぁな。こっちは飲み物と名刺を渡しただけだ。身元は確認したし、その名 刺も本物だ。ついでに、飲み物はノンアルコールだ」 「それは当たり前だ」  「クラブ」という名が冠されていようと、クラブ・ヴァルハラは神姫バトル を主眼に置いた店である。そんなところで酒類を飲む、という事はバトル放棄 を宣言しているようなものである(酒類を飲んだ状態でバトルを行う事は禁止 ではないが、まずまともに戦えない上に悪酔いしたあげくに吐く恐れがあるた め)。  このため、この店ではソフトドリンクの飲み放題はあっても、酒類の飲み放 題はない。だから、彼は「当たり前」と言ったわけである。 「ふむ・・・」 「で、どうするんです、このお誘い?」  名刺を手に考え込んだ彼に、葉月が決断を促した。それに対して、彼は行動 で応じた。黙ってグラスの中身を飲み干したのだ。 「受けるさ。断っても意味がない。それにさっきから気になる視線があってな、 それが変に長引いても困る」 「それは助かります」  応じた直後、店の暗がりの中からそんな声が返ってきた。さすがに驚く葉月 や神姫達を余所に、大悟は平然と応じた。 「何だ、さっきからの視線は誘い主自身だったのか」 「・・・マスター、はったりじゃなかったんだね」  驚いたようにアイネスが呟く。もっとも、驚いたのは相手も同様であった。 「よく分かりましたね。出来るだけ暗いところを選んだのですが」  そんな事を言いながら、暗がりから姿を表したのは中肉中背のスーツ姿の男 であった。いかにも仕事帰りのサラリーマンという風情であったが、機密保持 用と思わしきごつい手提げケースが、そうではない事を示していた。  が、大悟は相変わらず暗がりに視線を向けたままで男に問いかけた。 「お一人で?」 「ああ、ごめんなさいね。ちょっと手間取ってしまって」  即座に、今度は女性の声が返ってきた。 「本当にハッタリじゃなかったのですね」 「いや、流石です」  呆れたような葉月に続いて、男が感心をあらわに頷いた。  そんな反応に対して、大悟は軽く肩をすくめてみせた。 「いや、視線は複数だったし、出てきた後も暗がりの中で何かやっている気配 はしていたからな」 「普通の人は、そもそもそんな気配や視線を感じ取れたりはしませんよ」  そんなやりとりをしている間に、先ほどの女性が姿を見せた。こちらも仕事 帰りのOLという風情であった。 「お待たせしました」  そう言って女性が並ぶと、男は居住まいを正した。 「それでは、改めて。アームズ・イン・ポケット社のタケルと申します」 「ディオーネコーポレーションのミコトと申します。いつも我々2社の神姫を お使いいただき、ありがとうございます」  自己紹介と共に2人がお辞儀をすると、大悟も合わせて頭を下げた。 「黒川大悟といいます。早速ですが、どのようなご用件でしょうか?」  そう話を促すと、タケルはその前に、とばかりにマスターに話しかけた。 「マスター、ちょっと密談をしたいのですが、適当な席はありますか?」 「それなら、そこのボックス席を使うといい。声が漏れる心配ならまずない。 それに、ここの客でわざわざ聞きに来る無粋者は滅多にいないさ」 「ありがとうございます。それでは、早速お借りします」  礼を言うと、彼はマスターが示したボックス席に全員を連れて移動した。最 初は葉月が「邪魔をする気はありませんよ」と言って辞退しようとしたのだが、 タケルは「ここまで来たら、事情を知っていただいた上で黙っていただいた方 がよいでしょう」と主張したのだ。 「さて、それでは改めて、こちらの用件をお話します」  ボックス席を抑えたタケルは居住まいを正して、向かい合う大悟と葉月にそ う切り出した。 「まずはこちらをご覧下さい」  そう続けると、彼はごついケースを開け、その中を2人に向けた。 「アルトレーネタイプとアルトアイネスタイプ?」 「ですね。色が変更されていますが」  2人の言う通り、そこには藍色のアルトレーネタイプと真紅のアルトアイネ スタイプが納められていた。 「はい。好評のアルトレーネタイプとアルトアイネスタイプに多少チューンを 施したバリエーション機です」 「名前はアルトレーネ・ヴォイラタイプ、アルトアイネス・ローザタイプです」  彼の後を受けて、ミコトがそれぞれの機種名を伝える。 「ふむ」 「私達の姉妹機種なのですね」  大悟が頷くその手元で、レーネが興味津々といった風情で呟く。隣のアイネ スもこの先の話の展開に期待してか、目を輝かせている。 「今は実際に動かして、稼動データを収集している段階です。そこで黒川さん にはモニターとしてこの2体を使って頂きたいのです。お受けいただければ、 報酬・・・といっては何ですが、この2体をお譲りします」  タケルからの、非常に期待通りの提案にレーネもアイネスも目を輝かせて大 悟の袖を引っ張った。 『マスター!』 「んー」  2体の神姫のおねだりに、彼は何事かを考え込むかのように生返事を返すだ けだった。 「おや、何を考え込んでいるんです?」 「ん、ああ、自分で良いのですか?今なら、現役F1チャンプが隣にいますが」  神姫バトルに参加して、実は割と日が浅い男は、そんな事をのたまわり葉月 にため息をつかせた。 「はぁ、あのですね・・・いや、いいです。分かるように説明しましょう」 「は?」 「私の神姫であるアルテミスの機種名は覚えていますか?」 「天使型、アーンヴァルタイプだったな」 「そのメーカー名は?」 「フロントライン社だろ?」  それが何だというんだ?と訊きかねない風情の大悟に、葉月はこめかみさえ 押さえながら説明を始めた。 「そうです。アームズ・イン・ポケット社でもディオーネコーポレーションで もないんです。そんな他社製品を使用しているような人に、自社製品のモニター をお願いする人がいると思いますか?」 「・・・・・・」  ポン  ようやく納得出来た彼は、手のひらを拳で打った。 「なるほど」 「神姫の世界では、こういう事情がよく働くんです。多少は頭に入れておいた 方がいいですよ」 「そういうものか」 「そういうものです」  彼女は偉そうに頷いた。そこへ、ミコトが話を戻しにかかった。 「ま、まぁ、そういう事情があるわけです。それでどうでしょう。お受けいた だけるでしょうか?」 「この2体の特徴を教えていただけますか?判断はそれから、ということで」 「分かりました」  大悟の主張を受け入れて、タケルが説明を始めた。 「アルトレーネ・ヴォイラは従来の戦闘能力をそのままに、射撃戦能力を追加 することで強化を図った機体です。アルトアイネス・ローザは従来の格闘戦能 力をさらに高めるべく、より早い攻撃の行える短刀を主武器に設定し、さらに 加速を強化しました」 「ほう」 「実は、あなたの戦い方を見て購入される方が増えたのですが、あなたのよう な戦い方が出来ない、と苦情が来まして・・・」 「ああ・・・それはなぁ」  ちょっと声を落としたタケルのぶっちゃけ話に、実は責任者の1人であった 黒川大悟は苦笑するしかない。 「あれは、こっちが元々剣術をやっていたから出来た戦いだからなぁ。一応、 インタビューとかでも言っておいたはずなんだけど・・・」 「ま、世間一般の人は、そんな話、気にも留めませんからね」  彼のぼやきを、葉月はあっさりと粉砕する。 「そこで、とにかく対応を、という事でして・・・」 「マスター。いい話だと思うのです」 「ボクも同感。大体、そろそろ射撃戦もやれるようにしないと、って言ってい たじゃない」  自らの神姫達に強く勧められ、大悟もとうとう決意した。 「分かりました。そのお話、引き受けましょう」 「ありがとうございます!」  タケルは頭を下げ、レーネとアイネスの2体は手を取り合って喜びをあらわ にする。  こうして、2体の神姫、アルトレーネ・ヴォイラ、アルトアイネス・ローザ が黒川大悟の神姫として、新たに加わったのだった。 以下、続く ----------------------------------------------------------------------  2010年の冬コミでオトしてしまったバトルマスターズ本の、途中までを利用 して出した準備号です。  無料配本だったので、ネットにも転載します。  正式に本にしたものは、5月のマシンモード3には出したいですねぇ・・・ #某条例のせいでイベント中止になっていなければ  それでは。