スバル達の機動6課配属祝いと称して、はやて達はカラオケパーティーを開 いた。  何人かが歌い、場もいい具合に盛り上がる中、リインフォース2と歌い終え たはやては次に歌う人を指名した。 「そんなら次は・・・スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、スターズの  陸戦魔導師コンビでいこか」 「ええっ!?」  指名に驚きの声を上げたのは、ティアナであった。その理由は・・・ 「あ、あたしたち、2人で歌えるような歌なんて知りませんよ」  というものであった。まぁ、元々そういう「遊び」とは縁遠い所に加えて、 スバルと組んでからは彼女の特訓に余暇を費やす日々では、こんな場で披露す る歌など心得ていなくても無理はない。  だが、それで諦めるようなはやてではない。彼女は笑顔でパタパタとあおぐ ように手を振りながら応じた。 「そんなん、気にすることあらへん。誰でも初めてってものはあるんやから。  知らんのやったら、わたしが選んだる」  そう言うが早いか、ティアナに反論の隙を与えずに彼女はカラオケマシンを 操作して、曲を選び終えた。 「はい、マイク。楽しみにしてるからな」 「あ、はぁ」 「はーい」  半ば押しつけられたマイクを手に、ティアナは呆然と、スバルは元気よく頷 いた。 (しょーがない、覚悟決めて歌うか)  ため息1つ吐きだしてそう決意したティアナは、歌詞を映し出すディスプレ イと流れて始めたメロディに意識を集中させた。  メロディを聞いた直後にその正体に気付いたなのはは、素敵すぎる笑顔を浮 かべて、選曲したはやてに向けて親指を立ててみせた。それに気付いたはやて もイイ笑顔で同じように親指を立てた。その様子を見ていたフェイトは呆れと も諦めともつかない「しょうがないなぁ」という気持ちを頭を振って示した。  そして、シグナムとヴィータはため息をついた。2人とも、主であるはやて に対する敬愛の念なら十二分に持っている。だが、はやてがしばしば仕掛ける この手の「イタズラ」にはどうしてもついていけないのであった。  そんな期待と同情が混ぜ合わされた空気に、スバルとティアナは気付かなかっ た。初めて唄う歌の歌詞とメロディに集中していて、周囲の様子にまで気が回 らなかったからだ。  そんなわけで、サビの歌詞が表示されてから、はやての仕掛けた「イタズラ」 にようやく気付いたティアナは思わず大絶叫する羽目になった。 「って、何で男役と女役に分かれて歌うラブソングなんて歌わせているんです  かぁ!!」  直後、なのはとはやてはしてやったりとばかりにイイ笑顔を浮かべ、互いの 右手でハイタッチを決めた。いつもであれば2人を諌めるフェイトはといえば、 ティアナの絶叫がツボに入ってしまったらしく、うつむき、肩を震わせて笑い だしてしまうのをこらえていた。そして、シグナムとヴィーダは同情の表情で 肩をすくめた。  このリアクションに、ティアナは自分が「引っかけられた」事に気付いて、 低く唸るしか出来なかった。そこへ、一応は相方のスバルが脳天気(少なくと も、ティアナはそう思った)な口調と笑顔でなだめるように言った。 「ティアー、そんなにカリカリしないで。いいじゃない、女同士でラブソング  を堂々と歌えるなんて、滅多にあるものじゃなし」  この言いぐさに、ティアナは気の強さを感じさせる顔を真っ赤にして叫んだ。 「こっ。このバカスバルー!!」  同時に、人なつっこさが前面に出ているスバルの頬を思いっきりつねった。 「たとえ滅多に無いことでも、あんたとラブソングなんて歌いたくないわよ!!」 「い、いひゃい、いひゃいよ、ティアー」  いつもの事とはいえ、容赦ないティアナの反応に、思わず涙するスバルだっ た。一方・・・ 「いやー、2人とも、ええコンビやなぁ」 「うん、将来が楽しみ」  責任者2人が、その騒ぎを見ながら、満面の笑みと共に頷き合っていた。  どうやら、ティアナの受難はまだまだ続くようである。  おわっとけ P.S.その1  その後、ティアナははやてにまっとうな歌を選んで歌わせてもらい、ようや く機嫌をなおした。一方のスバルは憧れの人であるなのはと歌えて、終始上機 嫌であった。 P.S.その2  ちなみに、一連のデュエットで最も受けを取ったのはなのはとフェイトが歌っ たラブソングであった(選曲、フェイト)。