松です。ぱすチャC++のドラマCDを聴いて思いついた1発ネタ・・・
の予定がえらく長くなったので、一部先行掲載します。

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「お兄ちゃん・・・」
 いつもと違うか弱さを感じさせるか細いつぶやきと共に、フィルがユウキの
胸元にすがりついた。
 常日頃のあけすけな好意の表現とはあまりにかけ離れた態度に、ユウキはあ
らかじめ宣言されていたにもかかわらず反応してしまった。
「フィル・・・」
「お兄ちゃん・・・」
 そこへ、ダメ押しとばかりにうるんだ瞳で上目づかいに見上げる。
「うっ・・・」
「どうしたの?」
「いや、何と言うか・・・グッと来た」
「ふ〜ん」
 この答えに、フィルは表情を崩さないまま内心でガッツポーズをとっていた。
 想い人を心理的によろめかせたのだから、当然だろう。
 だが、ユウキを憎からず想っている他の女性陣がこの現実に不満を覚えるの
も当然だろう。
 そんな不満を解消すべく、意外にも斎香が動いた。彼女はユウキを背後から
抱きしめたのだ。それもただ抱きしめたのではない。自分の豊かな胸にユウキ
の頭が来るように、だ。
「うわっ?って、セ、センパイ?」
 驚いた相手の意識が自分に向いた事を認めた彼女は、柔らかい口調で彼に語
りかけた。
「駄目ですよユウキくん、妹さんによろめくなんて。人の道を踏み外してます
 よ」
 常日頃はしない、1つだけとはいえ年上である事を意識させる言葉使いでた
しなめる。
「え?あ、う・・・」
 意外で大胆な行動と、何より後頭部に感じる柔らかい感触に、半ばパニック
状態のユウキは答えるどころかまともな反応さえ示せない。
 そんな彼に、斎香はさらに追い討ちをかけた。鍛えているにも関わらず白魚
のような美しさを保っている指を彼の顎から顎下にかけて、指先を妖しく滑ら
せたのだ。
「分かりましたか?」
「ふぇ?・・・あ、うん・・・」
 斎香に撫でられた感触に惚けていたユウキは、答えになっていない曖昧な答
えを返してしまう。
 もっとも、斎香にとってはそれで十分であったので、それ以上の追求は行わ
なかった。代わりに顎から指を離し、その手で彼の頭をそっと撫でた。
「はい、素直ないい子は好きですよ」
 先ほどの妖艶一歩手前の態度とこの子供扱いに、ものすごい気恥ずかしさを
覚えたユウキはどうにも落ち着かず視線をあちらこちらにさまよわせた。
 そんな彼を余所に、フィルと斎香は互いの顔を見合わせて微笑みあった。
(さすが。上手いなぁ、斎香さん)
(フィルさんも。そういう手段もあるんですね)
 目だけでそんな会話を成立させる。もっとも、視線同士がぶつかって火花を
散らすという事はない。むしろ、互いの手腕を認め、讃えている。
 確かに、ユウキを巡る恋についてはライバル関係にある2人である。だが、
ライバル関係というものは、相手に対する憎悪や否定する感情によって成立す
るとは限らない。むしろ、相手を認めるからこそ成立する関係なのだ。そして、
この2人の場合、互いの窮地を助け合った間柄であるという点から、互いを認
めるばかりか好意さえ抱いているのである。
 そんなフィルと斎香の間で、恋敵の間でよくある「視線がぶつかって火花が
散る」などという事はありえないのだった。
 もっとも、はたから見る限り、「男を取り合う美少女2人」の図、または
「男を誘惑している美少女2人」にしか見えないのであるが。
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と、こんなところまでで。
要するに、誘惑合戦の予定だったんですけどねぇ;
それでは。