松です。ダークバスターさんよりいただいたクリスマスSSです。
お楽しみください。

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聖夜に降る祝福の雪

「よう、待ったか?」
「遅いよ!もう」
「おかーさん、あれ見て!」
「どうしたの?・・・フフ、サンタさんに頼んでみたら?」
「さ〜て、クリスマスケーキは如何ですか!?」
『♪〜♪♪〜〜♪〜♪』



街には、親子、働く者、来る時に合わせた歌などが、響き渡る。
しかし、その風景を眺めていた青年がいた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
ビルの屋上、しかも立ち入り禁止の場所兼メチャクチャ危ない場所に座り込んでいた。
"Courage to be darkness" [暗闇である勇気]の『闇の固定』で足場を固め、姿を見えなくし、『暗黒の盾』で強風を防いでいた。
「やっほ〜」
沙紀之 綾菜(さきの あやな)が声を掛けてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
しかし、勇斗(ゆうと)はそのまま街を眺めた。
ガシャ、ガシャン、ガガシャ!
フェンスのなる音が聞こえた。
「よいしょ、っと」
綾菜は横に座り、寄り添って腕を絡めた。
「えへへへへ♪」
「・・・・・・はあ」
勇斗は呆れてため息をついた。
それはそうだ、この娘は沙紀之財閥の令嬢にあたるらしく、おじいさん――現当主に(勇斗が独断で調べた結果)勘当されているそうだ。
「ねえ、今日はどうする?」
「今日はここにいるつもりだが・・・・・・お前が来たから、予定を変更する」
「疫病神とでも言いたいの?」
頬を膨らませ、泣きが入った顔でこちらを見てきた。
「違う、お前に飯をくさせなきゃならないからだ。一日中ここだと、退屈だろうーが」
「ってことは――デーt「違う」うわ〜〜〜〜〜ん!」
泣き出した。
「って、ちょ、ま、待て、俺が悪かった、デートでいい、今日一日デートだ!」
半場自棄(やけ)になりながら、綾菜をあやした。



やはり男は、女の涙――惚れた奴にはとくに弱いのであった。



「へへ♪」
「はあ〜」
綾菜は勇斗の腕に抱きついていた。
まさに、どこからどう見てもカップルである。
しかし、勇斗の服装は地味とダサイの中間の服装。
綾菜は、綺麗な服装かつ、どことなく気品があり、誰もが令嬢、または有名人だと感じとれる。
まさに、月と鼈(すっぽん)の差が無くなっている状況だ。
「勇斗、綾菜」
「あ、雷くん、こんにちは」
「雷、こんなところでバイトか?」
商品の花の世話をしている雷(らい)が、声を掛けてきた。
判りやすく言えば、「奪還屋」に出てくる、雷帝の覚醒の表情だと思ってくれれば早い。
「いや、バイトの子が怪我したから、変わりに代理を務めている」
「へえ〜、でもバイト料はどうなるの?」
「ボランティアみたいなものだから、出ないよ」
笑いながら言った。
「お前も大変だな」
勇斗は、苦笑しながら言った。
「ふ、花は好きだからな。・・・今日の夜、雪が降るかもしれない」
「そうか・・・・・・ホワイトクリスマスだな」
雷は、星座の位置で天候が判るらしい。
あと関係ないが、雷の実家は花屋さんだ。
「寒くなるが、熱々の二人なら乗り切れるさ」
「な?!」
「はい♪!」
勇斗は顔を赤くし、綾菜は喜んだ。
「勇斗、ちょっと」
店の奥を指さしながら、雷は俺を呼び込んだ。
勇斗は渋りながら、雷のあとについていった。
ちなみに綾乃は、雷の代わりに店番を始めた。
「で、なんだ?」
「少し待て」
雷は、袋の中をあさりだした。
勇斗は、綾菜の様子を覗いた。
綾菜は、花の世話を一生懸命やっていた。
そうしている内に、雷は袋からある物を取り出した。
「勇斗、コレを持っていけ」
クリスマスプレゼント用に舗装された包みを差し出した。
「なんだ、これは?」
「はあ・・・・・・鈍いのは『力』を持つ連中の探知能力だけにしてくれ」
雷は呆れながら言った。
「綾菜に渡すプレゼントだ。今日は何の日だ・・・・・・まさか」
「今日はクリスマス、夜は雪が降るからホワイトクリスマスだ」
「クリスマスといえば?」
「サンタクロース」
「サンタクロースが持ってくる物は?」
「クリスマスプレゼント」
「なら判るな?」
そうして勇斗は、雷からプレゼントを受け取った。



「あ、勇斗、雷、今まで何やってたのよ」
綾菜は怒りながら抗議した。
「すまない。で、どうだった?」
「お客さんが結構来て、本当に大変だったんだよ」
頬を膨らませ怒る綾菜。
俺は、綾菜どこに惹かれたんだろうか?
「何人くらいが来たんだ?」
「え〜と、14〜15人くらいかな」
「多!」
さすがの雷も、この短時間で14〜15人という数など経験が無い。多くても4〜5人程度だ。
「あと、コレも渡された」
綾菜は紙の束を差し出した。
「なんだこれ?」
勇斗と雷は、綾菜から差し出された紙の束を受け取って、中身を見た。


18時、○×橋の前で君を待つ
幸せを呼ぶ者より


俺たちは、初めに見た紙を無言で綺麗に畳み直し、俺の闇の力『斬殺の舞』で全て切り裂いた。
そして、雷の水の力『エレメントウォーター』で紙をよく溶かしてから、路上の排水溝に流した。
「え、ええ?なんで捨てちゃうの?」
「イタズラだったから」
「ああ、イタズラだったな」
綾菜は困った顔をした。



結局、綾菜に群がるハイエナどもから守ることになった勇斗。
ラブレターを渡してきた男どもに見せ付ける為に、ベタベタすることを許した。
本当は恥ずかしいし、こういうことは慣れてないので好きじゃないが、綾菜にもしもの事が起きたらマズイので、こういう結論になったのである。
まあ、今日はクリスマス。
似たような輩は、たくさん居るので恥ずかしがることも無い。
綾菜は嬉しそうだった。
でもいるんだよな〜、こういう雰囲気ぶち壊す奴。
その度に、綾菜の顔から笑顔が消えた。
さすがの俺も、三度目の奴には力と使って吹き飛ばした。
探索能力『黒の警戒』で、俺たちに近寄ってくる――特に雰囲気を壊そうとする奴らを、遠隔能力『闇矢の砲撃』と少し離れてついて来ている雷の『アクアトラップ』の餌食となっていった。
あと、周りに集中しすぎて綾菜を不機嫌にしていまし、腕を離してドンドン先へ行ってしまった。
待ってましたと言わんばかりに来た男どもは、雷に任せてた。



「ごめん、綾菜」
無言。
「あ、あのさ・・・お詫びに、何か言ってくれ。出来る範囲で何とかするから」
その言葉を聞いて止まり、こちらを振り向いた。
「キス」
「え?」
「キスして。ディープ・キス」
思考が一瞬止まり、再起動した瞬間、思考がフル回転を始めた。
一分間、お互い見つめあったまま、動かなかった。
「・・・・・・嘘つき」
「謹んでお受けさせてください」
土下座した。



これ以上、どうすればいいんですか?誰か教えてください。



さすがに公道のど真ん中では出来ないと言って、場所を変えてもらった。
ちなみに今は、夜の8時を回ったところ。
場所は大きなクリスマスツリーがある広場。
雪は、まだ降らない。
「ねえ、勇斗」
機嫌を直した綾菜が声を掛けてきた。
「どうした?」
さすがに寒く感じてきた勇斗は、ここに来る途中で安くて大き目のコートを買って着ていた。
「コートの中に入ってもいい?」
少し考え――
「ほら」
前を開けて入れてやった。
綾菜は嬉し恥ずかしくしながら、コートの中に入ってきた。



「何やってるんだよ、あのバカップルは」
雷は呆れながら言った。
あのあと、ドジッた勇斗の隙をついて、綾菜に漬け込もうとした連中を一人残らず叩き潰して、二人を探してようやく見つけたと思ったら――バカップル状態を見た。
「ま、上手くやっているようだし・・・・・・俺はそろそろ撤収しますか・・・・・・」
そうして、星座観察するために、裏道に消えていった。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやら・・・・・・お、雪か」



「あ、雪だ」
綾菜は子供のように目を輝かせた。
「あ!」
「どうしたの?」
勇斗は、雷から譲り受けた品の存在を思い出した。
「あ、あのな、綾菜・・・・・・渡したい・・・物が、ある」
俺もウブだな。そう思いながら言った。
綾菜は何も言わずにコートから出て、少し離れた。
そして、『暗黒の蔵』から取り出して、綾菜にソッポ向きながら片手で差し出した。
「私に?」
顔は見えないが、声がどことなく震えてた。
「あのな、俺の前にはお前意外に誰がいるんだ?」
「ううん、私しかいないよ」
そうして片手から重みが消えた。
「ねえ、約束」
「あ・・・・・・ああ」
勇斗は、きちんと綾菜の顔を見た。
その顔は、嬉し泣きと満面の笑顔があった。
そして、見つめ合い、キスをした。
約束道理、ディープ・キスで。



光り輝く街並み、そこには色々の人がいる。

仕事やバイトをして、他者や己の為に頑張る者。
家族団欒(かぞくだんらん)で過ごす者。
サンタクロースに頼んだプレゼントが、明日届くか楽しみにする子供たち。
その笑顔を楽しみにする親達。
男同士で寂しく過ごす者達。
一人で楽しむ者達。

そして、愛し合う者同士で過ごす者達。

この日は雪も降り、より寒くなるが、その喜びを祝福するように舞積もる。

その一つを祝福するかのように、降り積もる。

男は、平凡で変わり者だが、運命のイタズラで得てしまった力を持ってしまった。

女は、気品があり、優秀で全てに恵まれていたが、日々変わらぬ出来事に不満を持った。

だが、お互いを理解し、支え合う事が出来る者と唇を交わす。

まさに異端。
まさに不可解。
まさに在り得ない。

それは運命と言う名の歯車が示した出来事かもしれない。
それは偶然なのか、必然なのか。
それはお互いが引き合わせたのかもしれない。

時は進む。
回りながら進む。

道はある。
だが、その道は一つではない。
道を進めは、壁にぶつかり、躓(つまず)くこともある。

一人で登ることも、立てなくても出来なくても、二人なら出来る。
登ることも、立ち上がることも。



そして、二人は唇を離した。
「ところで、開けないのか、ソレ」
先ほど渡したプレゼントを指差した。
「うん、勇斗から、本物のプ・レ・ゼ・ン・トを貰うまでは」
軽く舌をだしながら、笑顔で言った。
「どうせ雷から、譲り受けた物でしょ、コレ」
そして、プレゼントを差し見せた。
「う」
図星を突かれ、固まる勇斗。
「ばれるに決まってるじゃない。そういうことに、気を使う君じゃないから」
「申し訳ありません」
頭を下げた。今日は謝りっぱなしてある。
「ふふふ、どうしよっかな〜」
こんな時も気品を失わない綾菜を尊敬するが、小悪魔の気品と笑みが見え隠れしていた。
自業自得だが。
「今日は、私の家に泊まること。これが一つ目」
「はいはいって、家に泊まる!?」
綾菜は右手で、左手の指を一本づつ曲げていった。
「二つ目は、一緒の部屋で寝ること」
「え!」
さらに続き――
「三つ目は、今着ているコートを譲ること」
で、両手を合わせるように叩いた。
「この三つの条件を飲んでもらうからね、勇斗♪」
一番最後はともかく・・・・・・一つ目と二つ目はマズイだろう。
二つ目は、明後日の日の光が見れるかどうか怪しい。
なんせ綾菜のじいさん――会長に会った時に、悪い虫と勘違いされて、家宝の刀で斬りかかられた事があるからな・・・・・・。
どうこう考えているうちに、腕に抱きついてきた。
「じゃあ、行きましょうか。お父様にも、ご報告しないといけないから」
その言葉を聞き、何となく聞いた。
「プレゼントの件は、お前が絡んでんな」
その言葉に止まる綾菜。
しかし、何事もなかったように歩き出した。
「やっぱりお前が企んでいたのか!?」
「うわ〜〜〜ん、ごめんなさ〜い!」
腕から離れ、綾菜は一目散に逃げ出した。
「あ、こら待て!」
勇斗も綾菜のあとを追いかけた。



Merry Christmas
メリー クリスマス

To all people || a blessing
全ての者に祝福を

So that, to these two people, there is eternal happiness・・・
この二人には、永久の幸せがあらんことを・・・

Fin



あとがき
まずは、勇斗、綾菜、雷の年齢についてです。
プロフィーユには、高校一年の16歳になってますが、戦い(何時書くか未定)が終わり、高校を卒業して、大学になって初めての冬です。
つまり、20歳という設定です。
まあ、4年後の話です。
上手くまとめられた、かな。
まあ、書いていた自分が恥ずかしい。
まあ、クリスマスですからOKということで。
最後まで読んでくださった皆さん。
良いことがありますように・・・

では。