松です。一式艦戦物語用の落書きです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 海龍の飛行甲板に、機首が鋭く尖った航空機が舞い降りた。
「あれが二式艦偵ですか?」
 新型機の配属を見物している真田は、退避用の張り出し甲板に移動する機体、
二式艦偵に視線を向けたままで呟いた。
「ああ、九九式双戦と九八艦雷に換えて、ウチの偵察と対艦攻撃を担当するこ
 とになる」
「偵察機に、ですか?」
 真田がもっともな疑問を投げかけると、やはり見物に来ていた三井技術大尉
がぼさぼさの髪をかき回しながら会話に加わって来た。
「元々、あれは降爆なんです。ただ、エンジンが始めて使う液冷なんで、実戦
 投入前に、偵察機として使ってみよう、と・・・」
「大丈夫なのか?」
「性能はいいですよ。急降下爆撃でも五〇〇キロまで積めますし、水平爆撃な
 ら八〇〇キロまでいけます。速度は零式艦戦より少し早いくらいで、航続も
 爆装して二〇〇〇キロ出ます」
 三井が並べた数字に、真田は眉をひそめた。
「確かに数字は立派だが、他の面は大丈夫なのか?壊れやすいとか、強度か足
 りないとか。大体、そんな無茶な高性能機、どこが作ったんだ?」
 真田のもっともな問いに、三井は「あー」と意味のない言葉を漏らしつつ、
視線を明後日の方向に向けたが、ややあって諦めにも似たため息と共に、素性
を白状した。
「ウチ(技術部)の航空局です」
「・・・本当に大丈夫なのか?不安になってきたぞ」
 真田が不安に思うのは無理もない。海軍の技術部と言えば、良く言えば技術
開発に熱心な人々、悪く言えば暴走する技術バカの群れと見なされている。彼
らが設計するものは、技術的に非常に優れているのだが、実際には理屈倒れな
設計であるものが多いからだ。
 真田の不安を受けて、三井が上空を指した。
「まぁ、上で飛ばしてもらっていますし、問題があれば、出てくるでしょう」
「飛ばしているのは松原か?」
「ええ」
 真田と同じように上空を見上げつつ、三井は頷いた。
「それにしても、よく分かりましたね」
「ウチの艦隊で、航空局謹製の機体を遠慮なくぶん回す奴と言ったら、あいつ
 しかいないだろが」
 彼は、呆れたように応じた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 それでは、こんなところで。