松です。一式艦戦の話。ちょっと思い浮かんだシーンです。
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「頭隠して尻隠さず、ってところかな」
海鷹から発進した磁気探知機を装備した哨戒型一式艦戦の後部座席で、オペ
レーターはそう呟いた。
実際、彼がのぞいている磁気探知機のスコープには、深度50メートルほど
を潜航中の連邦軍潜水艦の反応がはっきりと出ていた。(正確には、潜水艦自
体の反応ではなく、潜水艦が存在することによる地磁気の乱れに反応している
のだが)水中に潜る事で人の目から逃れ、一切の音を出さないことでソナーか
ら逃れても、磁気的な反応だけは消せないのだ。
「やりますか?」
「やろう」
年下のパイロットの声に、オペレーターは頷いた。長い時間をかけてこの上
空を飛び回ったおかげで、潜水艦の位置は特定出来ている。後は主翼に吊るし
た航空爆雷を命中させるだけだ。
「大きく回って、北側から進入。合図したら、爆雷の半分を投下しろ」
「了解」
パイロットは軽くフットペダルを踏み込んで指示通りに大きく旋回し、北側
へと回り込み。潜水艦に機首を向ける。
「そのまま、そのまま・・・・・よし、投下!」
スコープと計器を交互に見ながら誘導していたオペレーターは、タイミング
を見計らって爆雷の投下を命じた。
「投下!!」
パイロットは復唱すると同時に投下レバーを引く。すると、主翼に吊るされ
た合計20発の航空爆雷のうち、半分がわずかなタイムラグをおいて次々と投
下された。合計10発の爆雷は、小さな水柱を立てて海へと吸い込まれていく。
「さて、当たるかな?」
オペレーターが後ろを振り返りながら呟いた。すると、それに呼応するかの
ように海中で2つの閃光がきらめいた。続けて、海面が盛り上がり、直後、小
さい水柱が2本、出現した。
「2発命中、か」
「もう一度やりますか?」
「んー・・・いや、その必要はなさそうだ。見ろ」
オペレーターが指した先には、燃料と思われる油、海図か何かの紙類、そし
て乗組員の死体が浮かんでいた。
「撃沈、ですね」
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一式艦戦はこんな使われ方もされる、ということで。