久しぶりの落書きです。いえ、ここの所、こっちに出せる落書きが無かったもので;
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五式艦雷(五式艦上雷撃機)
九八式艦雷の後継雷撃機。
もっとも、一式艦戦の高性能ぶりから、かなり無茶な性能要求を基準に設計された。
ちなみに要求内容は以下の通り。
・カタパルト射出が可能なこと
・800キロを搭載しての急降下爆撃が可能なこと
・航空魚雷(または30センチ対艦ロケット弾)2本を搭載できること
・一式艦戦と行動と共に出来る速度、航続距離を持つこと
さすがに、無茶な要求であることは、海軍自身を承知していた。
そのため、急降下爆撃能力か搭載量、どちらか一方を満たせばよい、という但し書きがつけられていた。
もっとも、どちらか一方を満たすだけでもかなりの困難が予想された。
ひとまず、実現性の高い搭載量を主眼に置いて設計を開始した。
搭載量と速度、矛盾する要求を満たすために、設計者は主翼を高速飛行用に検討されていたデルタ状にすることを決めた。
おかげで、ずいぶん特異な外見になったが、高速、大搭載量を誇る高性能機となった。
争覇戦争末期に投入され、一式艦戦でも不可能であった飽和攻撃を行って連邦艦隊に打撃を与えた。
5機の五式艦雷が、海面すれすれの低空を飛びつつ戦艦へと突撃を開始した。
既に一式艦戦隊の対艦ロケット弾で輪形陣は切り裂かれ、対空砲火はかなり
無力化されていた。だが、それでも漫然と近づけばたちどころに叩き落されそ
うな火線が各艦から伸びていた。
皮肉な事に、最も強力な対空砲火を維持しているのは艦隊の中心にいる空母
であった。帝国軍が航空攻撃の方法として常用するようになった「輪形陣の外
にいる艦から攻撃」という手法が、空母や戦艦など、艦隊の中心部に位置する
艦が全くの無傷で最後まで残るという状態を作り出したがゆえである。
そういうわけで無傷の空母から、五式艦雷を阻止すべく、援護射撃が行われ
ることになった。本来、守られるべき空母が、戦艦を守るべく自艦の火力を使
うなど、本末転倒以外の何者でもなかったが、他に選択肢もないのであった。
もっとも、効果はあった。空母から放たれた近接信管付き高角砲弾が、一番
空母に近いところを飛んでいた五式艦雷を捕らえたのだ。立て続けの破片が、
五式艦雷の機体を切り裂き、翼から炎が上がった。結果、バランス崩れる。そ
のまま海面に叩きつけられるかに見えたが、パイロットが強引に五式艦雷を上
昇させることで水平飛行に復帰した。だが、火災は収まるどころか、ますます
燃え広がる気配を見せている。さらに、高度が上がり狙いやすくなった五式艦
雷に、各艦からの対空砲火が集中してきた。
「魚雷、撃てーっ!!」
このまま撃墜されるくらいならば、とパイロットが命令を下す。爆撃手も同
じ思いだったのだろう。間髪置かずに復唱し、投下レバーを引く。2本の航空
魚雷が切り離されたところで、五式艦雷に限界が訪れた。特徴的なデルタ状の
主翼が、炎に包まれてへし折れたのだ。直後、回復不能のきりもみに入り、あ
っという間に海面に叩きつけられた。叩きつけられる直前まで無傷であった片
方の主翼が、ごく短い時間、機体からちぎれて空を舞う。
だが、その光景を見ている余裕のある者は、敵味方どちらにもいなかった。
五式艦雷の搭乗員達は、魚雷の発射タイミングと危険極まりない低空飛行に全
神経を集中させていたし、連邦軍各艦の乗組員の方は、残る4機の撃墜と、防
空戦全般に意識を集中していた。
そして、翼が海面に没した直後、4機の五式艦雷は射点についた。射撃統制
装置のほとんどが破壊された艦が多い連邦軍艦隊の対空砲火では、彼らを止め
る事が出来なかったのだ。
「よし、撃て!!」
各機の機長が一斉に叫び、同時に投下レバーを引く。すると、爆弾倉に収め
られた2本の航空魚雷が海に飛び込んだ。4機合わせて8本の魚雷は、無情な
までの正確さで戦艦に向かって行った。
戦艦の艦長は必死の回避行動を取ったけれど、全てを回避することは出来な
かった。2機から放たれた魚雷合計4本が、この艦に直撃した。
ここで、五式艦雷の設計者が考えもしなかった副次効果が発生した。1機あ
たり2本の魚雷は、それほど間隔があるわけではない。ほとんど隣接と言って
も過言ではない幅しか持たず並走していた2本の魚雷の同時命中は、ごく普通
に命中した時よりも大きな破壊をもたらしたのだ。しかも、この戦艦には、そ
れが2箇所で発生した。結果、極めて大規模な浸水が発生し、大きく傾くこと
になった。
「やった!敵戦艦、大破は確実です!!」
「よし、引き上げるぞ」
偵察員の報告を受けて、機長は相変わらず低空飛行をしながら連邦軍艦隊の
輪形陣から離れていった。
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と、こんな感じです。
それでは。