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以下の要約は、次のコラム「地域社会をつむぐ」に掲載。 家庭で子育てしていると、社会から遠のいていると感じるのはなぜか。 自分は社会人なのに、収入のある経済活動をしている人が社会人で、その集団を社会と考えてしまいがちなのはなぜか。 社会の一員であると頭ではわかっていても、実感できないのはなぜか。 子育て中であろうとなかろうと、社会の一員。でも実感できないのはなぜか。 子育て中であろうとなかろうと、社会人。でも実感できないのはなぜか。 社会というものが、〔福地桜痴*による society の訳語〕として書かれているということは、それ以前の日本には「社会」という観念がなかったっていうこと。 長い歴史を持つ日本において、社会という観念は成熟していないということか。 介護は介護保険制度という仕組みがつくられ、十分ではないが介護の社会化が進みつつある。しかし、子育て環境はまだ社会化されていない。 住む人があって市町村や国は成り立つ。人口という人の数が、多くても少なくても問題とされるのは、それが市町村や国の根幹となるからだ。人の居ない自治体などない。 統計上の人の数が減るとき、つまり最期につながる介護を社会化にしたのであるから、同じ統計上の人の数が増えるとき、つまり誕生につながる子育ても社会化にすべきだ。 結局、日本の社会は、元気な男性が中心となって彼らの考えの中でつくられてきたものであって、少数派の人が生きる社会というものがまだ十分に育っていない。 だから、いまだに子育ては、母親である人が家庭の中でするものという域を出ていないのではないか。 だから、子育てに専念していると社会から隔離されたと感じてしまうのではないか。 だから、社会に戻れないとあせるのではないか。 彼女たちの焦りの一因を、平成18年版国民生活白書の中にみつけた。 「女性の再就職を妨げる壁 その1 子どもが小さいと育児負担が大きく、仕事との両立が困難であることから、 求職活動を始めることすらあきらめてしまう人が多い。 その2 育児を理由に離職した女性は、離職期間が長くなるほど正社員として再就職しにくくなる。 これは、職業能力が離職期間中に低下してしまうためと考えられる。」とある。 学んでいたときの自由な経験や働いていたころの鮮明な経験を持っているからこそ、彼女たちは、このことを感じていて、このままでは社会に戻れないのではないかと焦るのであろう。 子育てしながら暮らす日々の生活は、社会から隔離されたような状態になる。 在宅で子育てをしていると、出産後1年くらいは、自宅と買い物と子どもの検診と病院をつないだエリアが社会であることが多い。 彼女たちが暮らす社会は、明治期のジャーナリストである福地桜痴による society の訳語 −生活空間を共有したり、相互に結びついたり、影響を与えあったりしている人々のまとまり。また、その人々の相互の関係− ではなさそうだ。 結婚と同時に退職して見知らぬ土地に引っ越して、友達もいないまま子どもを産む。 周りを見渡しただけでも少なくはない。 人々とのつながりの中での子育てではなく、社会とはいいがたい「家とその周辺」だけの限られた空間と限られた人とのつながりのみで、暮らしている。再就職どころか自分が嘗て学び働いていた社会につながっていく一筋の光すら見えない。 いまの子育てがいやなのではない。子どもが日々大きくなっていき、そのうち手を離れることは頭の中ではわかっている。だが、子育てそのものに対する不安と自分の将来に対する自分でも説明のできない不安が大きな影響を与える。真っ暗なトンネルの中にいると表現した人も少なくない。この社会とつながりのない毎日の繰り返しが永遠に続くのではないかと希望が持てなくなるのである。 少子化で労働力を確保したい思惑もあり女性たちの再就職支援策がとられ始めている。 マザーズハローワークなどはその典型である。 施策は動き始めた。理由は何であれ、この際大いに活用して、更なる支援策を引き出そう。自ら動いて、参加してしよう。参加がなければ、動き始めたものがなくなる。その支援策が使いにくいならそういおう。女性に対する支援策そのものがいらないと言わせないためにも。 出産や介護などで離職した女性たちが子育てしながら社会へ戻ろうとする再チャレンジへの意欲は高い。しかし、いったん切れたものをつなぐのは難しい。細くてもよいからつなぎ続けたままでいけないものか。(つなぎとめるのではない。つなぎとめられたら自由は制限され、縛られる。) たとえ一本の糸でもつながっていればとの思いから、その細い糸をつむぐ活動をしている。 *福地桜痴 (1841-1906) 新聞記者・劇作家・小説家。長崎県生まれ。本名、源一郎。旧幕臣。「東京日日新聞」社長兼主筆。歌舞伎の改良運動に尽力。著「幕府衰亡論」「懐往事談」、小説「もしや草紙」、戯曲「春日局」など。 |